News

簗農水大臣の「予算カット」発言とは|経緯・国交省の調査結果・2市町の道路予算の数字を整理

簗和生(やな・かずお)農林水産大臣が、地元・栃木県の2つの自治体について、国の道路予算を「大幅にカットした」と発言していたことが報じられ、国会で追及が続いています。発言があったのは大臣就任前の2026年5月で、相手は、同年2月の衆院選で首長が対立候補を支援した那須烏山市と那珂川町でした。

簗氏は10月5日に発言を撤回して謝罪しましたが、国土交通省に予算の削減を働きかけたことは否定し、辞任もしない考えを示しています。国土交通省は6日、簗氏から2市町の予算配分について問い合わせがあったことを認めたうえで、働きかけや圧力は確認されなかったとする調査結果を公表しました。

この記事では、何が問題になっているのか、本人の説明はどう変わったのか、2市町の道路予算は実際にどうなっていたのかを、2026年10月11日時点の報道と、農林水産省が公開している記者会見の記録をもとに整理します。事態は動いているため、進退などは今後変わる可能性があります。

結論|10月11日時点で分かっていること・分かっていないこと

項目内容
発言2026年5月、自民党支部の会合で、那須烏山市と那珂川町の2026年度の道路予算を「大幅にカットした」などと発言。簗氏は発言を認め、10月5日に撤回して謝罪した
本人の説明国土交通省に予算の削減を働きかけた事実はない。党員の集まりで高揚感があり、誇張した表現をした、と説明している
国土交通省の調査(10月6日公表)2月中旬に、簗氏から2市町の配分額について問い合わせがあった。働きかけや圧力は確認されなかった。やり取りの記録は残っていない
2市町の道路予算国土交通省の説明では、市町が主体の事業に限ると那須烏山市が26.2%減、那珂川町が54.1%減。県が主体の事業を合わせると、それぞれ20.5%増、22.0%増
進退簗氏は辞任を否定。高市首相は更迭せず、続投させる考えを示している
分かっていないこと問い合わせの詳しい内容(記録がない)、2市町だけを問い合わせた理由の詳細、他の省庁で同じようなことがなかったか(首相は全府省の調査を行わない考え)
今後の予定那須烏山市議会が10月14日の臨時会で、簗氏への抗議決議案を採決する見通し


何があったのか|「予算カット」発言の中身

各社の報道によると、発言があったのは2026年5月24日、自民党大田原支部の総会後に開かれた懇親会です。会は非公開でした。週刊文春の電子版とデイリー新潮が、音声データを入手したとして9月末に報じました。

報じられた発言は、次の2点です。

  • 那須烏山市と那珂川町の2026年度(令和8年度)の道路予算は「大幅にカットした」
  • 両市町の首長は、自民党の国会議員は要らないという行動を取った

2月の衆院選で、両市町の首長は簗氏の対立候補を支援していました。そのため発言は、選挙で自分を支援しなかった自治体の予算を、報復として減らしたという意味に受け取られ、問題になりました。

簗氏は衆院栃木3区を地盤とする自民党の衆院議員で、当選6回(比例代表北関東ブロック)。2026年9月に農林水産大臣に就任しました。発言は就任の約4か月前のものです。

これまでの経緯(時系列)

時期できごと
2026年2月衆院選。那須烏山市と那珂川町の首長は、簗氏の対立候補を支援
2月中旬簗氏が、国土交通省の副大臣と官房長(いずれも当時)に、2市町の2026年度の配分額を問い合わせ。国交省側は、まだ決まっていないとして回答を保留
4月2026年度予算の成立後、当時の副大臣が簗氏に配分額を説明
5月24日自民党支部の総会後の懇親会で、道路予算を「大幅にカットした」と発言
9月簗氏が農林水産大臣に就任(就任会見は9月18日)
9月末週刊誌の電子版が、発言の音声を報道。官房長官は9月30日の会見で、事実関係を含め調査中と説明
10月2日午前閣議後の会見で、大臣就任前の一議員としての活動に関わるとして、回答を控えると繰り返す
10月2日夕方国会内で会見。報じられた発言内容を大筋で認める一方、国交省への働きかけは否定。辞任も否定
10月5日発言を撤回し、謝罪。高市首相から、職責を全うするよう指示を受けたと説明
10月6日国土交通省が調査結果を公表。簗氏は会見で、高揚感があり誇張した表現をしたと説明
10月7日・8日衆参両院の代表質問で野党が追及。首相は、不適切な発言で厳しく注意したとしつつ、更迭は否定
10月8日那須烏山市が、14日に臨時議会を開くと発表
10月9日国土交通省が、2市町で配分額が減った理由を説明
10月14日(予定)那須烏山市議会の臨時会で、抗議決議案を採決する見通し

簗大臣の説明はどう変わったか

簗氏の説明は、報道が出てからの約1週間で変わっています。農林水産省が公開している会見の記録と、各社の報道から整理します。

日付説明の内容
10月2日午前(閣議後会見)大臣就任前の一議員としての活動に関わる事柄なので、大臣としてのコメントは控える
10月2日夕方(国会内の会見)音声は聞いていないが、報じられたような発言をしたのだと思う。誤解を招く言い方があれば真摯に受け止める。国交省には問い合わせて確認しただけで、削減を働きかけてはいない
10月5日(記者団に)発言を撤回し、おわびする。担当省庁に予算削減を働きかけた事実はない。自分の意向で予算を左右できるかのような発言は極めて不適切だった
10月6日(閣議後会見)自民党の党員の集まりで高揚感のようなものがあり、誇張した表現をしてしまった。予算の額は国交省が判断している。問い合わせの時期は、はっきり記憶していない
10月7日(会見)国交省に問い合わせたのは、地元に関心の声があり確認したため。その時点で予算が作業中だとは知らなかった。減額を求めたことは一切ない
10月9日(閣議後会見)国交省には単に道路予算として問い合わせた。県の事業か市町の事業かは意識していない。説明を受けたうち、市と町の事業の部分を会合で話した

一貫しているのは、発言はしたが、予算の削減を働きかけた事実はない、という点です。つまり本人の説明に従えば、5月の発言そのものが事実と異なっていたことになります。簗氏は8日の国会答弁でも、事実と異なる発言をしてしまったと述べ、辞任はしない考えを重ねて示しました。


国土交通省の調査で分かったこと

道路予算を所管する国土交通省は、10月6日に調査結果を公表しました。報道されている内容は次のとおりです。

問い合わせはあった。対象は2市町だけ

  • 2月中旬、簗氏から、当時の副大臣と官房長に、那須烏山市と那珂川町の2026年度の配分額について問い合わせがあった
  • 問い合わせがあったのは、この2市町についてだけだった
  • その時点では配分額が決まっておらず、回答は保留された。予算成立後の4月以降に、当時の副大臣が簗氏に配分額を説明した
  • 問い合わせの内容は、事務次官まで報告されていた(毎日新聞)

働きかけや圧力は確認されず。ただし記録はない

国土交通省は、簗氏からの働きかけや圧力は確認されなかったとしています。ただし、問い合わせを受けた当時の官房長は、省の聞き取りに対し、細かいメモがなくはっきり覚えていないが、働きかけや圧力を受けたことはなかったと思う、という趣旨の説明をしたと報じられています。

やり取りの記録が残っていない点について、国土交通省は、内閣府のガイドラインでは単なる照会への応答は行政文書を作る対象になっていない、と説明しました(下野新聞)。

当時の副大臣で、現在は首相補佐官の佐々木紀氏も7日、簗氏から予算削減の働きかけも圧力もなかったと記者団に述べています。自分が配分の増減を指示したこともないと説明しました(毎日新聞)。

2市町の道路予算の数字

数字は、何を集計するかで大きく変わります。出どころごとに並べます。

出どころ集計の範囲那須烏山市那珂川町
2市町の説明(朝日新聞、10月2日)社会資本整備総合交付金。2025年度→2026年度6,535万1千円→2,426万7千円(約63%減)4,934万2千円→2,262万4千円(約54%減)
国土交通省(10月6日・9日)道路予算の配分額のうち、市町が主体の事業8事業で1億500万円(26.2%減)2事業で2,300万円(54.1%減)
国土交通省(10月6日)県が主体の事業も合わせた場合20.5%増22.0%増

国土交通省のいう「道路予算の配分額」は、社会資本整備総合交付金と防災・安全交付金の合計です。どちらも、自治体が行う道路整備などに国が出す交付金です。

那須烏山市については、国土交通省が簗氏には64%減と伝えていたものの、新規事業を含めると26.2%減になる、とも報じられています(下野新聞)。また朝日新聞によると、同じ交付金は栃木県全体では2025年度から2026年度にかけて約11%増えていました。

国土交通省が挙げた減額の理由

国土交通省は9日、2市町で配分額が減った理由を説明しました(読売新聞)。

  • 那須烏山市:国が重点的に予算を配る「重点計画」にあたる市の事業が4つあり、そのうち1つが今年度に完了する見通しだった
  • 那珂川町:町が主体の2事業はどちらも重点計画にあたらず、この2事業について町から要望がなかった

国土交通省は、配分は自治体からの要望、事業の進み具合、重点配分の対象かどうかなどを総合的に見て決めていると説明しています。

一方、朝日新聞は2市町の説明として、2026年度の要望額は那須烏山市が4,783万6千円、那珂川町が7,208万円で、示された額はこれを大きく下回ったと報じました。両市町の担当者は、ここまで減ったことはなかったと話しているといいます。国土交通省の説明と自治体側の受け止めには、開きが残っています。


簗氏を応援した自治体では増額、という報道

毎日新聞は10月5日、衆院栃木3区のうち、首長が簗氏を応援した自治体では道路予算が増えていたと報じました。6日の閣議後会見では、記者が那須塩原市と那須町の名前を挙げて質問しています。下野新聞も、簗氏を応援した2市町は増額、対立候補を支援した3市町は減額だったと報じました。

簗氏は6日の会見で、自分からの働きかけはないと否定し、予算の額は国土交通省が適切に判断していると認識している、と述べました。支持・不支持が配分に影響したのかという質問には、国土交通省が判断する事柄で自分が答えられるものではない、と答えています。

首相・与野党・地元の反応

立場主な発言・対応
高市早苗首相発言は不適切で、厳しく注意した。任命責任は自分にある。簗氏には働いて仕事で返すよう伝えている。予算配分に政治的な支持・不支持を持ち込まないのは当然。全府省の調査は行わず、適切な配分を徹底する(10月7日・8日の代表質問)
井林辰憲国土交通大臣報道されているような形で道路予算が削減された事実はない、と報告を受けている(10月2日)
国民民主党・玉木雄一郎代表行政がゆがめられたのではないか、というのが問題の本質。全省庁で調査し、国会に報告すべきだ
立憲民主党・水岡俊一代表更迭も含めて厳しい対処が必要ではないか
民主改革の会・小川淳也代表閣僚の任に値しない。本人が判断するか、首相が任命責任を果たすのが望ましい
共産党・田村智子委員長更迭、辞任を求めていく
公明党・岡本三成代表国土交通省の調査結果は、あまりにも不十分ではないか
日本維新の会・藤田文武共同代表調子に乗った発言だ、と批判
自民党内対応が不誠実だ、もうもたないのでは、という声が出ていると報じられている。参院議員の鈴木宗男氏は9日の党の会合で、説明責任を果たすよう簗氏に求めた
那須烏山市・川俣純子市長問い合わせは配分額の確定前で、対象も2市町に限られており、疑念はむしろ深まった。簗大臣と国土交通省は、明確な説明責任を果たしてほしい
那珂川町・益子純恵町長2市町を名指しした発言で、多くの町民・市民に不安を与えたのは事実。不安が払拭されるよう説明してほしい

下野新聞は、野党が簗氏に対する問責決議案の提出を検討していると報じています。10月11日時点で、提出されたという報道は確認できていません。

なぜ問題になっているのか

論点は大きく3つあります。

  1. 予算が政治的な理由でゆがめられたのではないか:国の予算は、選挙での支持・不支持と関係なく配られるのが前提です。首相も国会で、持ち込まないのは当然と答弁しています。国土交通省は働きかけや圧力は確認されなかったとしていますが、やり取りの記録はなく、当事者の記憶に基づく説明にとどまっています
  2. 配分額が決まる前に、2市町だけを問い合わせたこと:簗氏は地元の関心の声があったためと説明していますが、関心の中身については、資料がなく明確に答えられないとしています(日本経済新聞)。那須烏山市長は、この点で疑念が深まったとコメントしました
  3. 事実と異なる発言を、支持者の前でしていたこと:働きかけがなかったのなら、5月の発言は事実ではなかったことになります。簗氏自身が、不適切だったと認めています

ほかに報じられていること

予算をめぐる発言のほかにも、簗氏については報道が続いています。いずれも報道の段階で、事実関係は確定していません。

報道の内容簗氏の説明
2024年12月の会合で、予算の箇所付けを国土交通省にやらせる、という趣旨の発言をしたとされる音声がある(下野新聞)9日の会見で、今回の発言のほかに、国に対して予算や道路事業をめぐる働きかけをしたことがあるかと問われ、一切ないと答えた
過去の衆院選で、支持者をシャトルバスで無料送迎したことが、公職選挙法に違反する疑いがある(週刊文春)法令にのっとり適正に処理しているという認識だが、指摘を受けて事実関係を確認しており、整理でき次第、説明する(10月9日の会見)

これからの焦点

  • 10月14日:那須烏山市議会の臨時会。議案の名前は、簗氏の言動に対して強く抗議する決議で、毎日新聞は全会一致で可決される見通しと報じている。簗氏は9日の会見で、内容をしっかり受け止めたいと述べた
  • 国会:野党は追及を続ける構え。問責決議案が提出されるかどうか
  • 説明:2市町だけを問い合わせた理由、シャトルバスの件について、簗氏がどこまで説明するか
  • 進退:簗氏は辞任を否定し、首相も更迭を否定している。10月11日時点で、辞任や更迭は発表されていない


よくある質問

簗大臣は、本当に予算をカットしたのですか?

分かっていません。簗氏は、削減を働きかけた事実はなく、発言は誇張だったと説明しています。国土交通省も、働きかけや圧力は確認されなかったとしています。一方で、市町が主体の事業の配分額が減っていたこと、配分が決まる前に2市町だけの問い合わせがあったことは事実で、やり取りの記録は残っていません。

2市町の道路予算は、減ったのですか、増えたのですか?

集計の範囲によります。国土交通省の説明では、市町が主体の事業に限ると、那須烏山市が26.2%減、那珂川町が54.1%減です。県が主体の事業を合わせると、それぞれ20.5%増、22.0%増になります。

簗大臣は辞任するのですか?

10月11日時点で、簗氏は辞任を否定しています。高市首相も国会で、更迭しない考えを示しました。野党は辞任や更迭を求めています。

農林水産省の予算の話ですか?

違います。問題になっているのは国土交通省が所管する道路予算で、発言は簗氏が農林水産大臣に就く前のものです。簗氏は6日の会見で、農林水産予算を公平に編成するかを問われ、選挙の結果ではなく現場の実情に応じて適切に対応するのが行政として当然のあり方だ、と答えました。

ほかの省庁でも同じことがなかったか、調べるのですか?

国民民主党の玉木代表が全府省の調査を求めましたが、首相は8日の衆院本会議で、調査を行わなくても適切な予算配分を徹底させていく、と答弁しました。


まとめ

  • 簗和生農林水産大臣が、就任前の2026年5月、那須烏山市と那珂川町の道路予算を「大幅にカットした」と発言していたことが9月末に報じられた
  • 簗氏は10月5日に発言を撤回して謝罪。予算の削減を働きかけた事実はなく、誇張した表現だったと説明している
  • 国土交通省は10月6日、2月中旬に2市町の配分額について問い合わせがあったと認めたうえで、働きかけや圧力は確認されなかったと公表した。やり取りの記録はない
  • 市町が主体の事業の配分額は、那須烏山市が26.2%減、那珂川町が54.1%減。県が主体の事業を合わせると増えている
  • 簗氏は辞任を否定し、首相も更迭を否定。野党は辞任・更迭や全府省の調査を求めている
  • 那須烏山市議会は10月14日の臨時会で、抗議決議案を採決する見通し

※本記事は2026年10月11日時点の報道と、農林水産省が公開している大臣記者会見の記録を基に作成しました。発言の内容や国土交通省の調査結果は、各社の報道によるものです。予算額や増減率は出どころによって集計の範囲が異なります。簗氏は予算削減の働きかけを否定しており、国土交通省も働きかけや圧力は確認されなかったとしています。週刊誌が報じた内容には、事実関係が確定していないものが含まれます。今後の動きによって、内容が変わる場合があります。

参考資料

-News