
愛知県と岐阜県を流れる庄内川に、2026年9月8日午後6時20分、警戒レベル5相当の「レベル5氾濫特別警報」が発表されました。直接のきっかけは、庄内川水系の支流・矢田川にある瀬古基準観測所(名古屋市)が「氾濫発生水位」に達したことです。
その後、水位は低下しました。庄内川のレベル5氾濫特別警報は9日午前0時40分にレベル2氾濫注意報へ切り替えられ、午前2時40分には氾濫注意水位を下回ったとして指定河川洪水予報が解除されました。名古屋市も午前2時45分、矢田川を対象にしていた避難指示を解除しています。
注意したいのは、「レベル5氾濫特別警報が出た」ことと、「庄内川本川の堤防が決壊した」ことは同じではない点です。公式資料が確認したのは矢田川の水位到達で、当時の表現は「すでに氾濫が発生している可能性」「名古屋市で浸水しているおそれ」でした。庄内川本川の特定地点で堤防決壊や越水を確認したとの発表ではありません。
この記事では、2026年9月9日午前6時30分ごろまでに確認できた気象庁、国土交通省、名古屋市などの情報を基に、警報の経過、どの川が危険だったのか、実際の浸水被害との違い、今後の注意点を整理します。
最新状況|庄内川の洪水予報は午前2時40分に解除
| 日時 | 発表・状況 |
|---|---|
| 9月8日午後6時20分 | 庄内川にレベル5氾濫特別警報。矢田川・瀬古観測所が氾濫発生水位に到達 |
| 9月8日午後7時20分 | 気象庁と国土交通省が合同の報道発表 |
| 9月9日午前0時40分 | レベル5からレベル2氾濫注意報へ切り替え |
| 9月9日午前2時40分 | 庄内川が氾濫注意水位を下回り、指定河川洪水予報を解除 |
| 9月9日午前2時45分 | 名古屋市が矢田川の避難指示を解除 |
午前0時40分の切り替えでは、瀬古観測所が氾濫注意水位を下回ったことに加え、現地で浸水が大幅に減少したことが理由として示されました。午前2時40分には、庄内川の水位が氾濫注意水位を下回ったとして予報そのものが解除されています。
つまり、9日朝の時点でレベル5氾濫特別警報は継続していません。ただし、警報解除は河川や道路の安全を一律に保証するものではありません。水が引いた後も、冠水した道路、アンダーパス、側溝、損傷した護岸などには危険が残る場合があります。
「庄内川が氾濫した」と断定できる?

結論からいうと、今回の公式発表だけを根拠に「庄内川本川の堤防が決壊し、外水氾濫が発生した」と断定することはできません。
気象庁と国土交通省の資料には、次の事実が記載されています。
- 対象は庄内川の洪水予報区
- 発表の直接の対象区間は、支流・矢田川の瀬古基準観測所が受け持つ名古屋市内の区間
- 瀬古観測所が「氾濫発生水位」に到達
- 矢田川で氾濫が発生している可能性があり、名古屋市で浸水しているおそれがあると判断
「氾濫発生水位」は、河川の水位から氾濫が差し迫っていることを判断するための基準です。瀬古観測所では5.71メートルが警戒レベル5相当の基準とされています。しかし、水位が基準へ達しただけで、どの地点から水があふれたか、堤防が壊れたかまで自動的に確定するものではありません。
今回、名古屋市内では道路冠水や住宅の浸水が実際に発生しました。ただし都市部の浸水には、河川から水があふれる「外水氾濫」だけでなく、短時間の猛烈な雨で下水道や排水施設が処理しきれなくなる「内水氾濫」もあります。個々の浸水地点をすべて庄内川・矢田川の氾濫によるものと結び付けることはできません。
なぜ「庄内川」の警報なのに矢田川が対象だったのか
矢田川は庄内川へ合流する支流で、庄内川の指定河川洪水予報に含まれます。そのため、発表名は広い予報区を示す「庄内川」でも、危険が切迫していた具体的な区間は矢田川という場合があります。
9月8日午後6時20分時点で、庄内川のレベル5氾濫特別警報に関係する市町村として、公式資料には次の14市町が掲載されました。
- 愛知県:名古屋市、瀬戸市、春日井市、小牧市、一宮市、稲沢市、清須市、北名古屋市、あま市、豊山町、大治町、蟹江町
- 岐阜県:多治見市、土岐市
これは予報区に関係する自治体の一覧です。14市町すべてで庄内川が氾濫した、または全域が浸水したという意味ではありません。公式資料で氾濫切迫の対象として特定されたのは、矢田川・瀬古観測所の受け持ち区間である名古屋市でした。
名古屋で1時間104.5ミリ、観測史上最大の雨
水位が急上昇した背景には、愛知県と岐阜県で発生した線状降水帯による記録的な大雨があります。
気象庁の9月8日午後6時までの集計では、主な観測値は次のとおりです。
| 地点 | 最大1時間降水量 | 12時間降水量 |
|---|---|---|
| 名古屋(名古屋市千種区) | 104.5ミリ(観測史上1位を更新) | 213.0ミリ(観測史上1位を更新) |
| 多治見(岐阜県多治見市) | 93.0ミリ(観測史上1位を更新) | 180.0ミリ(観測史上1位を更新) |
| 蟹江(愛知県蟹江町) | 74.5ミリ | 136.5ミリ |
| 美濃加茂(岐阜県美濃加茂市) | 57.5ミリ(9月の1位を更新) | 119.0ミリ |
名古屋では1時間に100ミリを超える猛烈な雨となりました。川の水位上昇だけでなく、道路や地下空間へ雨水が集中する内水氾濫の危険も急激に高まり、交通機関や帰宅者に大きな影響が出ました。
確認されている浸水・人的被害
CBCテレビが愛知県内の状況として9月8日午後11時26分に報じた暫定集計では、負傷者は4人、住家被害は床上浸水7棟、床下浸水11棟でした。
| 被害 | 公表された内訳 |
|---|---|
| 負傷者4人 | 名古屋市西区1人、北名古屋市2人、蟹江町1人 |
| 床上浸水7棟 | 名古屋市千種区1棟、一宮市1棟、瀬戸市4棟、蟹江町1棟 |
| 床下浸水11棟 | 名古屋市守山区2棟、一宮市3棟、瀬戸市3棟、あま市1棟、蟹江町2棟 |
これは8日深夜時点の集計であり、その後の調査で件数や被害区分が変わる可能性があります。また、これらは大雨による愛知県内全体の被害で、すべてが庄内川や矢田川からあふれた水によるものと確認されたわけではありません。
名古屋市営地下鉄は大雨で一時運転を見合わせましたが、8日午後10時30分までに全線で運転を再開したと報じられています。一方、名古屋市立の幼稚園、小中学校、高校、特別支援学校などは9日に臨時休校・休園となりました。鉄道や道路は個別に状況が変わるため、利用前に各事業者の最新情報を確認してください。
レベル5氾濫特別警報とは

レベル5氾濫特別警報は、2026年5月29日に始まった新しい防災気象情報です。洪水予報河川で、氾濫が差し迫った場合、氾濫が発生した場合、または氾濫が続いている場合に発表されます。
重要なのは、レベル5は安全な場所へ避難を始める目安ではなく、すでに通常の避難が難しいほど危険が切迫した段階だということです。自治体の警戒レベル4「避難指示」までに危険な場所から避難し、レベル5になってしまった場合は、外へ出るほうが危険なら建物の上階など少しでも安全な場所で直ちに身を守ります。
| 河川氾濫の情報 | 住民が取る行動の目安 |
|---|---|
| レベル5氾濫特別警報 | 命の危険。直ちに安全確保 |
| レベル4氾濫危険警報 | 危険な場所から全員避難 |
| レベル3氾濫警報 | 高齢者など避難に時間がかかる人は避難 |
| レベル2氾濫注意報 | 避難場所や経路を確認 |
自治体が出す「緊急安全確保」や「避難指示」と、気象庁・河川管理者が出す河川情報は発表主体が異なります。河川の警報が切り替わっても、自治体の避難情報が解除されるまでは自治体の指示に従ってください。
警報解除後も注意すべきこと
庄内川の洪水予報と名古屋市の矢田川避難指示は解除されましたが、名古屋地方気象台は東海地方で9日夜遅くにかけて再び線状降水帯が発生し、大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があるとして注意を呼びかけています。
- 増水した川や用水路を見に行かない
- 水が残るアンダーパスや冠水道路へ車で入らない
- 側溝やマンホールの位置が見えない道路を歩かない
- 地下街・地下駐車場では管理者の案内を確認する
- 避難所から戻る場合は自治体の解除情報と帰路の安全を確認する
- 再び雨が強まったら、キキクルと河川水位を早めに確認する
特に車は、水深が浅く見えてもエンジン停止やドアが開かなくなる危険があります。迂回できる場合は冠水箇所へ進入しないことが最も安全です。
よくある質問

庄内川のレベル5氾濫特別警報は現在も出ていますか?
出ていません。9月9日午前0時40分にレベル2氾濫注意報へ切り替えられ、午前2時40分には庄内川が氾濫注意水位を下回ったとして指定河川洪水予報が解除されました。
庄内川は実際に氾濫したのですか?
公式に確認されたのは、支流・矢田川の瀬古観測所が氾濫発生水位へ達したことです。気象庁と国土交通省は「氾濫が発生している可能性」と発表しましたが、庄内川本川の堤防決壊や越水地点を確認したとの記載はありません。道路や住宅の浸水は発生していますが、外水氾濫と内水氾濫を個別に区別する調査結果はまだ示されていません。
なぜ矢田川の水位で「庄内川」に警報が出るのですか?
矢田川は庄内川へ合流する支流で、庄内川の指定河川洪水予報に含まれるためです。今回の具体的な氾濫切迫区間は、矢田川・瀬古観測所が受け持つ名古屋市内の区間でした。
名古屋市の避難指示は解除されましたか?
矢田川を対象にしていた警戒レベル4の避難指示は、基準を下回ったことから9月9日午前2時45分に解除されました。再発令や別の災害に関する避難情報が出る可能性もあるため、名古屋市防災ポータルを確認してください。
警報が解除されたら川を見に行っても大丈夫ですか?
危険です。上流の雨によって遅れて水位が変わる場合があり、河川敷、護岸、道路が損傷している可能性もあります。河川管理者が安全を確認するまで川や用水路へ近づかないでください。
今後また水位が上がる可能性はありますか?
あります。東海地方では9日夜遅くにかけて再び線状降水帯が発生する可能性が示されています。短時間の強い雨で支川や下水道の水位が急上昇することもあるため、警報解除だけで判断せず最新の雨雲・水位情報を確認してください。
まとめ|レベル5は解除、確認されたのは矢田川の水位到達
- 9月8日午後6時20分、庄内川にレベル5氾濫特別警報が発表された
- 直接の対象は支流・矢田川の瀬古観測所受け持ち区間で、氾濫発生水位に到達
- 公式発表は「氾濫している可能性」としており、庄内川本川の堤防決壊を確認した発表ではない
- 名古屋では1時間104.5ミリ、12時間213ミリを観測し、ともに観測史上1位を更新
- レベル5警報は9日午前0時40分にレベル2へ切り替え、午前2時40分に洪水予報を解除
- 名古屋市は午前2時45分に矢田川の避難指示を解除
- 道路冠水や住宅浸水は発生したが、すべてを庄内川・矢田川の外水氾濫と断定することはできない
- 東海地方では9日夜遅くにかけて再び大雨となる可能性があり、川や冠水箇所には近づかない
検索結果やSNSには、最も危険だった時間帯の「レベル5」という表示が残り続けます。情報を見るときは発表日時を確認し、現在の警報、自治体の避難情報、河川水位の3つをセットで判断してください。
※本記事は2026年9月9日午前6時30分ごろまでに公表された情報を基に作成しています。被害件数、交通情報、気象・河川情報は随時変わります。避難や移動の判断では、気象庁、国土交通省、各自治体の最新情報を優先してください。