
政府は2026年10月9日、給与関係閣僚会議と閣議で、2026年度の国家公務員給与を引き上げる人事院勧告を、勧告どおり実施すると決めました。月給は平均1万5,056円(3.51%)の引き上げ、ボーナス(期末・勤勉手当)は0.05月分増えて年4.70月分になります。月給とボーナスがそろって上がるのは、2022年から5年連続です。
ただし、閣議決定は「実施する」という政府方針の決定で、この時点で給与が変わるわけではありません。実際の改定には、国会で給与法を改正する必要があります。差額がいつ支給されるかは、10月9日時点で公表されていません。
この記事では、人事院が8月7日に公表した資料と、10月9日の内閣官房長官談話・報道を基に、いくら上がるのか、誰が対象なのか、いつ反映されるのかを整理します。
結論|10月9日時点で決まったこと・まだ決まっていないこと
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 政府の決定 | 2026年10月9日、給与関係閣僚会議と閣議で、人事院勧告どおりの実施を決定 |
| 月給 | 平均1万5,056円(3.51%)引き上げ。2026年4月実施の内容 |
| ボーナス | 年4.65月分→4.70月分(+0.05月分) |
| 初任給 | 一律9,500円引き上げ。一般職(大卒)は24万1,500円 |
| 平均年間給与 | 行政職俸給表(一)の職員で約26.6万円(3.7%)増 |
| 新しい手当 | 転居手当を新設(2027年4月実施。月6,000円〜10万5,000円) |
| 休暇 | 理由を問わず年7日まで取れる無給休暇を新設(2027年4月1日施行) |
| 勧告の対象 | 給与法の適用を受ける一般職の国家公務員 約28.6万人 |
| まだ決まっていないこと | 給与法改正の成立日、差額の支給日 |
「行政職俸給表(一)」は、一般的な行政事務を行う職員に適用される給料表です。人事院の官民比較は、この俸給表の職員を基準にしています。
月給は平均1万5,056円(3.51%)増|民間との差を埋める改定

人事院は毎年、国家公務員と民間企業の4月分の給与を調べ、その差(官民較差)を埋めるよう勧告しています。2026年4月分の比較結果は次のとおりです。
| 区分 | 1人当たりの給与額(2026年4月分) |
|---|---|
| 民間 | 44万3,507円 |
| 国家公務員 | 42万8,451円 |
| 差(官民較差) | 1万5,056円(3.51%) |
比べているのは、国が行政職俸給表(一)の職員、民間が企業規模100人以上の事業所で働く事務・技術関係職種の従業員です。役職、勤務地域、学歴、年齢をそろえて比べる方法(ラスパイレス方式)を使っています。
1万5,056円の内訳は、俸給(基本給にあたる部分)の引き上げが1万1,179円、広域異動手当の引き上げが2,376円、俸給の改定に伴う諸手当の増減(はね返り分)が1,501円です。
級ごとの改定率|中堅層以上は前年より手厚く
| 行政職俸給表(一)の級 | 平均改定率 |
|---|---|
| 1級 | 4.0% |
| 2級 | 3.6% |
| 3級 | 3.4% |
| 4級 | 3.1% |
| 5〜10級 | 3.0% |
| 全体 | 3.3% |
改定率は級が低いほど高くなっています。一方で人事院は、業務で重要な役割を担う中堅層以上の職員について、2025年を上回る改定にしたと説明しています。
「3.51%」は全体の平均で、全員の月給が1万5,056円上がるわけではありません。また、この数字はベースアップ(ベア)にあたる部分です。人事院は、モデル試算した定期昇給分を加えると、月収で約4.9%の改善になるとしています。
初任給は一律9,500円引き上げ
| 区分 | 改定前 | 改定後 | 引き上げ率 |
|---|---|---|---|
| 総合職(大卒) | 24万2,000円 | 25万1,500円 | 3.9% |
| 一般職(大卒) | 23万2,000円 | 24万1,500円 | 4.1% |
| 一般職(高卒) | 20万300円 | 20万9,800円 | 4.7% |
改定後の額と引き上げ率は人事院の資料によります。一般職の改定前の額は同じ資料のモデル給与例の額、総合職(大卒)の改定前の額は、改定後の額から9,500円を引いて計算しました。
表の金額は俸給の月額で、地域手当などは含みません。たとえば本府省に勤める総合職(大卒)の係員のモデル給与例では、地域手当(20%)と本府省業務調整手当を含めた月額が、30万1,200円から31万2,600円になります。
ボーナスは年4.70月分に|上乗せは2026年12月期
ボーナスは、民間の直近1年間(2025年8月〜2026年7月)の支給割合が4.72月、公務が4.65月だったことから、0.05月分引き上げて年4.70月分とする内容です。引き上げ分は、期末手当と勤勉手当に0.025月分ずつ配分されます。
| 支給期 | 期末手当 | 勤勉手当 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 2026年度 6月期(支給済み) | 1.2625月 | 1.0625月 | 2.325月 |
| 2026年度 12月期 | 1.2875月(現行1.2625月) | 1.0875月(現行1.0625月) | 2.375月 |
| 2027年度以降 6月期・12月期 | 各1.275月 | 各1.075月 | 各2.35月 |
一般の職員の場合の月数です。合計欄は、期末手当と勤勉手当を足した計算値です。
2026年度は6月期がすでに支給されているため、増える0.05月分は12月期にまとめて上乗せする内容になっています。2027年度以降は、6月期と12月期に同じ月数ずつ配分されます。
年収はいくら増える?人事院のモデル給与例

人事院の資料では、行政職俸給表(一)の職員の平均年間給与は約26.6万円(3.7%)増えます。役職・年齢ごとのモデル給与例は次のとおりです。
| 勤務先 | 役職・年齢 | 年間給与(勧告前) | 年間給与(勧告後) | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 地方機関 | 係員・18歳(一般職高卒の初任給) | 331万9,000円 | 348万7,000円 | +16万8,000円 |
| 地方機関 | 係員・22歳(一般職大卒の初任給) | 384万4,000円 | 401万4,000円 | +17万円 |
| 地方機関 | 係長・35歳 | 506万6,000円 | 525万9,000円 | +19万3,000円 |
| 地方機関 | 係長・40歳 | 538万6,000円 | 558万9,000円 | +20万3,000円 |
| 地方機関 | 課長・50歳 | 708万5,000円 | 730万6,000円 | +22万1,000円 |
| 本府省 | 係員・22歳(総合職大卒の初任給) | 494万2,000円 | 514万6,000円 | +20万4,000円 |
| 本府省 | 係長・28歳 | 588万4,000円 | 610万2,000円 | +21万8,000円 |
| 本府省 | 課長補佐・35歳 | 832万円 | 861万円 | +29万円 |
| 本府省 | 室長・40歳 | 1,105万4,000円 | 1,138万1,000円 | +32万7,000円 |
| 本府省 | 課長・50歳 | 1,447万3,000円 | 1,488万3,000円 | +41万円 |
| 本府省 | 局長 | 1,938万6,000円 | 2,003万1,000円 | +64万5,000円 |
| 本府省 | 事務次官 | 2,523万9,000円 | 2,609万円 | +85万1,000円 |
局長と事務次官は指定職俸給表、それ以外は行政職俸給表(一)の例です。モデル給与例は、俸給、地域手当(地方機関は非支給、本府省は20%)、俸給の特別調整額、本府省業務調整手当を基礎に計算されています。超過勤務手当や扶養手当などは計算に入っていないため、実際の年収とは一致しません。
出典:本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み(人事院、2026年8月、PDF)
「5年連続」の中身|2022年からの推移
| 勧告の年 | 月給の引き上げ(率・額) | ボーナスの年間月数(前年比) | 平均年間給与の増加 |
|---|---|---|---|
| 2022年(令和4年) | 0.23%・921円 | 4.40月(+0.10月) | 5.5万円(0.8%) |
| 2023年(令和5年) | 0.96%・3,869円 | 4.50月(+0.10月) | 10.5万円(1.6%) |
| 2024年(令和6年) | 2.76%・1万1,183円 | 4.60月(+0.10月) | 22.8万円(3.4%) |
| 2025年(令和7年) | 3.62%・1万5,014円 | 4.65月(+0.05月) | 26.3万円(3.8%) |
| 2026年(令和8年) | 3.51%・1万5,056円 | 4.70月(+0.05月) | 26.6万円(3.7%) |
いずれも行政職俸給表(一)の数字で、人事院の資料「給与勧告の実施状況」によります。
2020年と2021年は月給の改定がなく、ボーナスは引き下げ(2020年は0.05月分、2021年は0.15月分)でした。2022年以降は、月給・ボーナスとも毎年引き上げが続いています。
2026年の月給の引き上げは、額では2025年を42円上回り、率では2025年を下回りました。共同通信は、3%を超える増加は2年連続で、1990・91年度以来の高い水準だと報じています。
転居手当を新設|2027年4月から月6,000円〜10万5,000円
転勤に伴う負担を軽くするため、転居を伴う転勤をした職員を広く対象にする手当が新設されます。人事院の資料では「転居に関する手当」、10月9日の内閣官房長官談話では「転居手当」と表記されています。実施は2027年4月です。
- 対象:別の官署への異動を命じられ、異動先への通勤が難しいため、一定距離以上の転居をした職員(単身赴任者に限らない)
- 支給期間:異動から3年間(単身赴任者でやむを得ない場合は、3年を超えて延長可能)
- 単身赴任者には、この手当とは別に単身赴任手当(月3万円)を支給
| 距離の区分 | 単身赴任者(月額) | 単身赴任者以外(月額) |
|---|---|---|
| 60km以上100km未満 | 1万1,000円 | 6,000円 |
| 100km以上300km未満 | 1万8,000円 | 9,000円 |
| 300km以上500km未満 | 3万円 | 1万3,000円 |
| 500km以上700km未満 | 4万1,000円 | 1万8,000円 |
| 700km以上900km未満 | 5万2,000円 | 2万2,000円 |
| 900km以上1,100km未満 | 6万1,000円 | 2万6,000円 |
| 1,100km以上1,300km未満 | 7万円 | 2万9,000円 |
| 1,300km以上1,500km未満 | 7万8,000円 | 3万3,000円 |
| 1,500km以上2,000km未満 | 8万7,000円 | 3万6,000円 |
| 2,000km以上2,500km未満 | 9万6,000円 | 4万円 |
| 2,500km以上 | 10万5,000円 | 4万3,000円 |
人事院は、東京から異動する場合の年額の例として、東京―大阪で約22万円(単身赴任者は約49万円)、東京―福岡で約35万円(単身赴任者は84万円)を示しています。
広域異動手当は2026年4月実施で引き上げ
広い範囲の異動をした職員に支給される広域異動手当は、支給割合が引き上げられます。異動の距離が60km以上300km未満の場合は5%から8%へ、300km以上の場合は10%から16%へ変わります。
人事院の例では、地域手当が支給されない地域どうしで異動する地方機関の係長の場合、年額で約16万円(60km以上300km未満)、約32万円(300km以上)の改善になります。
理由を問わない年7日の無給休暇も新設
給与とは別に、休暇の制度も変わります。勤務時間法を改正し、すべての職員を対象に、公務の運営に支障がない場合、理由を問わず無給で年7日まで取れる「無給休暇」を新設する内容です。施行は2027年4月1日とされています。
- 日単位で取る場合:介護に至る前の親の体調の変化や、災害による住居の損壊などで、既存の休暇の日数を超えて休む必要があるときの備え
- 時間単位で取る場合:いわゆる「小1の壁」や妊娠の初期・後期の体調の変化などで、一定の期間だけ短い時間で働くとき
あわせて、休日や土日に勤務したときの代休や振替を、今の取得単位(代休日は1日、週休日の振替などは1日または4時間)に満たない場合でも取れるようにします。こちらも2027年4月1日施行です。官房長官談話によると、政府はこれらも勧告どおり実施します。
出典:本年の職員の勤務時間及び休暇の改定に関する勧告のポイント(人事院、2026年8月、PDF)
対象は誰?地方公務員や首相・閣僚の扱い
人事院の資料によると、公務員は全体で約334.8万人で、内訳は国家公務員が約59.4万人、地方公務員が約275.4万人です。このうち人事院の給与勧告の対象になるのは、給与法の適用を受ける一般職の国家公務員、約28.6万人です。
地方公務員は自動的には上がらない
地方公務員の給与は、それぞれの自治体の条例で決まります。今回の閣議決定で、地方公務員の給与が自動的に上がるわけではありません。
10月9日の内閣官房長官談話は、地方公務員の給与改定について、各地方公共団体が地方公務員法の趣旨に沿って適切に対応するよう要請するとしています。都道府県や政令指定都市などでは人事委員会が勧告を行い、最終的な改定額や時期は、自治体ごとの条例改正で決まります。
首相・閣僚の給与
共同通信は、高市早苗首相を含む閣僚には、議員歳費を超える給与は支給されないと報じています。
いつから反映される?今後の流れ
- 2026年8月7日:人事院が国会と内閣に勧告
- 2026年10月9日:政府が給与関係閣僚会議と閣議で、勧告どおりの実施を決定
- 今後:勧告の内容を盛り込んだ給与法改正案を国会で審議
- 法改正の後:改定後の給与を支給
月給の改定は「2026年4月実施」の内容です。法改正が成立すれば、4月以降の分について、改定前の額との差額が支給されることになります。
時事通信によると、政府は今の国会で給与法改正案の成立を目指しています。成立日と差額の支給日は、10月9日時点で公表されていません。
なお、2025年の閣議決定は11月11日でした。2026年は、それより約1カ月早い決定です。
よくある質問

全員の月給が1万5,056円上がるのですか?
いいえ。1万5,056円(3.51%)は平均です。行政職俸給表(一)の平均改定率は、1級の4.0%から5〜10級の3.0%まで、級によって違います。
閣議決定されたので、10月の給与から増えますか?
閣議決定だけでは給与は変わりません。国会で給与法の改正が成立してから、改定後の給与が支給されます。支給日は公表されていません。
地方公務員も同じだけ上がりますか?
決まっていません。地方公務員の給与は自治体ごとの条例で決まるため、引き上げ額や時期は自治体によって違います。
民間のどんな企業と比べているのですか?
企業規模100人以上で、かつ事業所規模50人以上の事業所が対象です。人事院の資料では、約5万400事業所のうち約1万100事業所を調査し、従業員約47万人の4月分給与を調べたとしています。
転居手当はいつから、いくらもらえますか?
実施は2027年4月です。月額は距離に応じて、単身赴任者以外が6,000円〜4万3,000円、単身赴任者が1万1,000円〜10万5,000円です。支給期間は異動から3年間です。
まとめ
- 政府は2026年10月9日、人事院勧告どおりに国家公務員給与を引き上げると閣議決定した
- 月給は平均1万5,056円(3.51%)増、ボーナスは年4.70月分(+0.05月分)
- 月給とボーナスがそろって上がるのは、2022年から5年連続
- 初任給は一律9,500円増。一般職(大卒)は24万1,500円
- 行政職俸給表(一)の職員の平均年間給与は約26.6万円(3.7%)増
- 転居手当と年7日の無給休暇は2027年4月から
- 実際の改定には給与法の改正が必要で、成立日と差額の支給日は未公表
※本記事は2026年10月9日時点の人事院・首相官邸の公表資料と報道を基に作成しました。金額や月数は勧告の内容で、給与法の改正後に確定します。表の「合計」「改定前の額(総合職)」「42円」は、公表された数字からの計算です。



