
警察庁は2026年9月10日、捜査費を不正に使用したなどとして、伊貝耕・前サイバー捜査課長(55)を懲戒免職処分にしました。警視庁も同日、詐欺や背任などの疑いで書類送検しています。
報道によると、問題となったのは海外の捜査機関への派遣中から課長在任中にかけての経費処理です。領収書の偽造、会食相手の虚偽申告、交流会費用の二重計上などが確認されたとされています。公金を管理する幹部の責任と、支出を確認する仕組みが問われる事案です。
この記事では、2026年9月11日までに確認できた報道と公的な制度資料を基に、処分の概要、経緯、金額の違い、再発防止策を整理します。個別事案については、警察庁の説明を伝える報道に基づいています。書類送検は有罪の確定ではなく、懲戒処分と刑事手続きは区別して読む必要があります。
サイバー捜査課長の懲戒免職、何があったのか
| 項目 | 確認できた内容 |
|---|---|
| 処分日 | 2026年9月10日 |
| 対象者 | 警察庁の伊貝耕・前サイバー捜査課長、55歳、警視長 |
| 処分 | 懲戒免職 |
| 問題となった期間 | 2022年7月~2026年4月 |
| 不正の回数・規模 | 50回、捜査費約170万円超と報道 |
| 刑事手続き | 警視庁が詐欺や背任などの疑いで書類送検 |
共同通信は、処分時の所属を長官官房付と報じています。「前サイバー捜査課長」という肩書で、すでに課長職を離れた後の処分です。警察庁が行った人事上の処分と、警視庁による犯罪捜査は、担当する組織も手続きも異なります。出典:共同通信・警察庁前サイバー課長を免職。
処分につながった捜査費の不正とは

テレビ朝日が伝えた警察庁の説明では、経費処理の問題は主に次のような内容です。いずれも、捜査活動のために必要だったとして扱われた支出と、実際の内容に食い違いがあったとされています。
謝礼品の領収書を偽造
海外の治安当局の職員への謝礼として購入した日本酒などについて、金額を水増しした偽造領収書を提出していたと報じられています。謝礼品の購入という名目だけでなく、提出された証拠書類の真正性が問題になっています。
部下との会食を海外当局との会食と申告
本来は経費にできない部下との会食について、海外の治安当局の職員との会食だったと偽っていたとされています。領収書に金額が記載されていても、それだけで公務として支出できるとは限らず、相手や目的の確認も必要だったことが分かります。
交流会費用を二重に計上
欧州刑事警察機構(ユーロポール)が主催した交流会用の食料品などについて、機構側から補助金を受け取りながら、そのことを隠し、全額を捜査費で負担したと偽ったと報じられています。出典:テレビ朝日・領収書偽造などを巡る報道。
これらは報道された不正の概要です。すべての支出が同一の手口だったと説明したり、50回すべてを同じ犯罪事実として立件したと捉えたりすることはできません。
約170万円超と約90万円は何が違うのか
不正全体として報じられている金額と、刑事事件として立件された部分の金額は異なります。共同通信は捜査費計173万円を不正に得たと報じ、そのうち約90万円について警視庁が立件したと伝えています。TBSは不正全体を約174万円と表記しています。
本記事では、確認した報道で細かな表記に差があるため、全体の規模を「約170万円超」としています。この差が生じた理由を確認できていない以上、独自に端数や集計方法を推定して一つの正確な金額を作ることはしません。出典:共同通信の報道、TBS NEWS DIGの報道。
また、約90万円が立件対象とされていることから、残りが適正な支出だったと結論づけることもできません。組織が調査・処分の対象とした範囲と、刑事事件として証拠に基づき扱われる範囲は、必ずしも一致しないためです。対象外となった個々の支出の判断理由について、この記事で確認した報道は詳しく説明していません。
海外派遣から処分までの経緯
テレビ朝日の報道では、伊貝氏は2022年6月から、海外連絡担当官としてオランダ・ハーグのユーロポールに派遣されていました。共同通信によると、2025年9月にサイバー捜査課長に就き、2026年6月から官房付となっていました。
| 時期 | 経緯 |
|---|---|
| 2022年6月 | ユーロポールへ海外連絡担当官として派遣 |
| 2022年7月~2026年4月 | 捜査費の不正があったとされる期間 |
| 2025年9月 | サイバー捜査課長に就任 |
| 2026年6月 | 官房付となる |
| 2026年9月10日 | 懲戒免職、詐欺や背任などの疑いで書類送検 |
出典:テレビ朝日、共同通信。上記は報道された人事と行為の時期を整理したもので、官房付への異動理由や、不正発覚の詳しい経緯まで示すものではありません。
本人の説明と返済について
TBSは、不正に受け取った捜査費が生活費、遊興費、知人女性との交際費などに充てられていたと報道しています。また、伊貝氏が全額を返済し、国民に迷惑をかけたとして謝罪の意向を述べていると伝えています。出典:TBS・本人の説明と返済に関する報道。
返済が報じられたことと、処分や捜査が終了したことは同じではありません。今回、返済の報道とともに懲戒免職・書類送検が伝えられており、公金の返還だけで責任の問題がなくなったとはいえません。私生活上の関係者については、事案の理解に必要のない身元や情報を推測する根拠はありません。
懲戒免職と書類送検は別の手続き

懲戒免職は公務員の身分に関する処分
人事院の説明では、国家公務員の懲戒処分には免職、停職、減給、戒告があります。法令違反や職務上の義務違反などに対して、任命権者が行う処分です。懲戒免職は、その職員の身分を失わせる処分であり、単に課長職を外すこととは異なります。出典:人事院・懲戒制度の説明。
人事院の懲戒処分の指針は、行為の動機や態様、結果、職員の職責などを踏まえた判断を求めています。ただし、一般的な指針から今回の処分理由のすべてを推定することはできません。個別事案でどの事情を重視したかは、処分主体の説明と区別して読む必要があります。出典:人事院・懲戒処分の指針。
書類送検は有罪判決ではない
検察庁の説明では、警察などから送られた事件について、検察官が捜査し、証拠を検討して起訴・不起訴を決めます。したがって、書類送検が報じられた段階で、裁判による有罪が確定したと表現することはできません。出典:検察庁・刑事事件の手続き。
9月11日までに本記事で確認した報道では、懲戒免職と書類送検が伝えられています。起訴・不起訴の判断や判決は確認できていません。「処分された事実」と「犯罪の疑い」を分けることが、ニュースを正確に理解するために重要です。
警察庁が示した再発防止策
共同通信は、支出の確認が不十分だったとして、前任者ら2人が長官注意となったと報じています。これは伊貝氏本人への懲戒免職とは別の措置です。出典:共同通信・管理面の責任に関する報道。
TBSによると、警察庁は海外で捜査費を使う際の具体的な計画書の事前提出や、課長自身の支出を官房長などが確認する仕組みを盛り込んだ通達を出しました。支出する幹部自身に確認が偏らないよう、管理を厳格化する対応です。出典:TBS・再発防止策に関する報道。
再発防止の実効性を考えると、計画書を提出したかどうかだけでなく、実際の支出と一致しているか、他機関からの補助や支払が重複していないかを確認できるかが重要になります。これは報道された不正の内容から考えられる検証上の論点であり、新たに不正が判明したという意味ではありません。
今後確認すべき点
今回明らかになったのは、海外派遣と課長在任の期間にまたがる捜査費の不正を理由とした懲戒免職と、その一部についての書類送検です。今後は検察の判断に加え、再発防止策が現場でどのように運用されるかが注目されます。
一方、処分の対象となった金額、立件対象の金額、刑事責任の確定を混同しないことが必要です。追加の公表や報道を確認する際も、誰が何を判断したのか、対象期間や対象行為はどこまでかを確かめることで、事実関係を整理できます。
情報確認日:2026年9月11日。対象者の年齢・肩書は処分時の報道に基づきます。個別事案は警察庁の説明を伝える各社報道を参照し、制度の説明は人事院・検察庁の資料で確認しています。