退職代行モームリ社長逮捕の概要

2026年2月3日、退職代行サービス「モームリ」を運営する株式会社アルバトロスの代表取締役社長である谷本慎二容疑者が、弁護士法違反の疑いで警視庁に逮捕されました。
あわせて、同社の従業員であり妻でもある谷本志織容疑者も同容疑で逮捕されています。
今回の事件は、退職代行サービス業界において初めて本格的に刑事責任が問われた事例として、大きな注目を集めています。
特に問題視されたのは、弁護士資格を持たない民間企業が、実質的に法的な退職交渉へ関与していた点です。
報道によると、両容疑者は2024年ごろ、退職を希望する利用者と勤務先との間で生じる法的なやり取りについて、弁護士資格がないにもかかわらず、弁護士事務所への有償あっせんを行っていた疑いが持たれています。
これは、報酬を目的として法律事務を取り扱ったり、その業務を仲介したりする行為を禁じる弁護士法に抵触する可能性があります。
退職代行サービス自体は違法ではありません。
しかし、企業と労働者の間に発生する交渉の内容が、法律判断や権利義務の調整に踏み込む場合、その行為は弁護士または法的権限を持つ団体に限定されます。今回の逮捕は、この一線を越えた疑いがあるとして捜査が進められた結果です。
また、本件では単なる業務範囲の逸脱にとどまらず、弁護士との間で紹介料を伴う関係が構築されていた点も問題視されています。
これにより、利用者にとっては合法的なサービスを受けているように見えながら、実際には法令違反の構造に組み込まれていた可能性が指摘されています。
この事件は、退職代行サービスの利便性だけに目を向けてきた社会に対し、合法性と透明性を改めて問い直す契機となっています。
今後の捜査の進展次第では、モームリ単体の問題にとどまらず、業界全体の運営モデルに大きな影響を及ぼす可能性があります。
問題となった弁護士法違反と非弁提携の仕組み
今回の事件で中核となっているのは、弁護士法で明確に禁止されている非弁行為と非弁提携です。
これらは法律業務の信頼性を守るために厳格に規制されている行為であり、違反した場合は刑事責任が問われます。
弁護士法では、弁護士資格を持たない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことを禁止しています。
ここでいう法律事務とは、単なる事務連絡にとどまらず、権利義務の判断や法的効果を伴う交渉や調整を指します。
退職代行においては、会社側との条件調整や退職の成立を前提としたやり取りが、法律事務に該当する可能性があります。
さらに問題となったのが非弁提携です。
非弁提携とは、弁護士資格を持たない者が、弁護士と報酬を分配する目的で顧客を紹介したり、業務を実質的にコントロールしたりする関係を指します。
これは弁護士の独立性を損ない、利用者保護を脅かす行為として厳しく禁止されています。
本件では、退職代行サービスの運営主体である株式会社アルバトロスが、退職希望者を弁護士へ有償で紹介し、その対価として金銭を受け取っていた疑いが持たれています。
この構造は、形式上は紹介であっても、実態として報酬目的の業務あっせんと評価される可能性があります。
また、退職代行モームリ側が利用者の状況を整理し、どの弁護士に回すかを判断していたとされる点も重要です。
もし弁護士が独立した判断のもとで受任していたのではなく、退職代行事業者の業務フローの一部として動いていたのであれば、非弁提携と判断される可能性が高まります。
退職代行サービスは、本人に代わって退職の意思を伝える行為自体は直ちに違法とはなりません。
しかし、そこに法的判断や交渉が介在した瞬間に、弁護士法の規制対象となります。
今回の事件は、その境界線を越えた疑いが具体的に示された点に大きな意味があります。
この章で整理したように、問題の本質は退職代行というサービス形態そのものではなく、誰がどこまでの業務を担っていたのかという点です。
次章では、退職代行モームリに対して専門家から指摘された具体的な違法性について、事実ベースでさらに詳しく掘り下げていきます。
退職代行モームリの違法性が指摘された具体的内容

退職代行モームリを巡る問題は、単なる業務範囲の誤解ではなく、複数の観点から違法性が指摘されてきました。
今回の逮捕は、その指摘が刑事事件として具体化した結果といえます。
まず最も重要な点は、非弁行為の疑いです。
退職代行モームリは、利用者の退職意思を伝えるにとどまらず、会社側とのやり取りに深く関与していたとされています。
退職日の調整や引き継ぎの条件確認、会社側からの反論への対応などは、法的判断を伴う可能性が高い行為です。
これらを弁護士資格のない民間企業が行うことは、弁護士法の趣旨に照らして問題があると指摘されてきました。
次に、非弁提携の構造です。
モームリの運営主体である株式会社アルバトロスは、退職希望者を特定の弁護士へ紹介し、その対価として金銭を受け取っていた疑いがあります。
紹介そのものが直ちに違法となるわけではありませんが、報酬を目的とし、かつ継続的に行われていた場合、業務あっせんとして違法評価される可能性があります。
さらに問題視されたのが、労働組合を介在させた点です。
表向きは労働組合との連携をうたいながら、実態としては団体交渉を行う体制が整っていなかったとされています。
実質的な活動実態が乏しい組合を通すことで、合法性を装っていたのであれば、利用者に対する重大な誤認を招く行為といえます。
広告表現についても深刻な指摘があります。
実際には退職が成立しなかったケースが存在していたにもかかわらず、退職成功率が常に百パーセントであるかのような表現が用いられていました。
これは、サービスの実態と乖離した誇大な訴求であり、消費者保護の観点からも問題があります。
また、通知や伝言しか行えないにもかかわらず、交渉が可能であるかのように受け取れる表現が使われていた点も見逃せません。
利用者は法的に安全な手続きが行われると誤解したまま契約していた可能性があり、結果として不利益を被るリスクを負わされていました。
これらの点を総合すると、退職代行モームリの問題は一つの違反行為にとどまらず、業務設計そのものに無理があったことが分かります。
利便性を優先するあまり、法律が定める明確な線引きを超えていたことが、今回の事件の本質です。
次章では、こうした運営の背景にあった社長の生活実態や社内体制に焦点を当て、なぜ違法なスキームが長期間続いたのかを掘り下げていきます。
退職代行モームリ社長の生活実態と社内体制
報道により明らかになったのは、退職代行モームリを率いていた経営トップの生活実態と、企業としての統治体制の脆弱さです。
運営主体である株式会社アルバトロスは、急成長の一方で、内部統制と法令順守の仕組みが十分に整備されていなかったと指摘されています。
代表取締役である谷本慎二容疑者については、高額な住居費を伴う生活を送っていたとの報道があり、事業収益の使途や経営判断の妥当性に疑問が投げかけられています。
企業の健全性は、売上規模や知名度だけで測られるものではなく、収益の配分や再投資の在り方にも表れます。
また、社内における人事管理や労務管理の面でも問題が指摘されています。
従業員に対する強い圧力や不適切な言動があったとされ、組織内で異論やリスク指摘が表に出にくい環境だった可能性があります。
こうした体制では、法的リスクや事業上の問題点が是正されないまま蓄積しやすくなります。
さらに重要なのは、違法性が疑われる業務スキームが社内で常態化していた点です。
特定の担当者や外部関係者に依存した運営は、チェック機能が働きにくく、経営判断が属人的になりがちです。
結果として、弁護士法に抵触する可能性のある業務フローが見直されないまま継続していたとみられます。
企業として本来求められるのは、サービス拡大と同時にコンプライアンス体制を強化する姿勢です。
しかし、急速な集客と利益確保を優先する中で、法的な線引きが軽視されていたのであれば、それは経営上の重大な欠陥といえます。
この章で見てきたように、今回の事件は個人の問題に還元できるものではありません。
経営判断、社内文化、統治体制が複合的に絡み合った結果として表面化した事案です。
次章では、こうした問題が利用者にどのような影響を及ぼしているのか、申込者や進行中の案件に焦点を当てて整理していきます。
モームリ利用者と申込者への影響

今回の事件により、最も直接的な影響を受けているのは、退職代行モームリを利用していた人や申込手続きの途中にあった人たちです。
運営主体である株式会社アルバトロスの代表者らが逮捕されたことで、サービスの継続性そのものが大きく揺らいでいます。
報道や関係者の情報によると、モームリのサービスは事実上の停止状態にあり、新規申込はもちろん、すでに進行中だった退職代行も完了できない可能性が高い状況です。
退職代行はタイミングが極めて重要なサービスであり、途中で連絡が取れなくなること自体が、利用者にとって深刻な不利益となります。
特に問題となるのが、料金をすでに支払っていた利用者への対応です。法人の資金状況次第では、返金手続きが円滑に進まないおそれがあります。
銀行口座が凍結されている場合、事業資金の流動性が失われ、返金や追加対応が困難になることも考えられます。
また、退職が未了のまま宙に浮いているケースでは、勤務先との関係が悪化するリスクも否定できません。
本来は第三者を介することで精神的負担を軽減するはずのサービスが、結果として利用者を不安定な立場に置いてしまう事態となっています。
さらに注意すべき点は、モームリが弁護士や労働組合と連携していると説明されていたことを前提に契約した利用者が多い点です。
もし説明内容と実態が異なっていた場合、利用者は十分な判断材料を与えられないまま契約していた可能性があります。
この点は、今後の対応や紛争処理の場面で重要な論点となる可能性があります。
現時点で利用者が取るべき行動としては、勤務先への状況説明や、別の合法的な手段への切り替えを検討することが現実的です。
退職手続きそのものは本人が行うことも可能であり、必要に応じて弁護士など法的権限を持つ専門家へ直接相談することが安全性の面で重要になります。
この章で整理したように、今回の事件はサービス提供者だけでなく、利用者にも大きな影響を及ぼしています。
次章では、この問題が退職代行業界全体にどのような波及効果をもたらすのか、業界構造の視点から詳しく見ていきます。
退職代行業界全体への影響と今後の見通し
退職代行モームリの社長逮捕は、個別企業の不祥事にとどまらず、退職代行業界全体の在り方を見直す契機となっています。
これまで急速に拡大してきた市場に対し、法的な整理と線引きが改めて強く意識される局面に入ったといえます。
現在の退職代行業界は、大きく分けて弁護士が運営または関与する形態と、民間企業が運営する形態に分かれています。
民間企業型は価格の手頃さや即時対応を強みに利用者を増やしてきましたが、法的権限の限界という根本的な課題を抱えていました。
今回の事件は、その課題が現実の刑事責任として表面化した事例です。
捜査の焦点が非弁提携にとどまる場合、影響は特定の事業者に限定される可能性があります。
しかし、退職交渉そのものが非弁行為として立件される方向に進んだ場合、同様の業務フローを持つ事業者は一斉に見直しを迫られます。
実際、業界内では業務内容の縮小や表現の修正、サービス提供方法の変更を検討する動きが広がると考えられます。
また、広告や集客手法にも影響が及ぶ可能性があります。
成功率を強調する表現や、交渉が可能であるかのように受け取れる表現は、今後一層慎重な運用が求められます。
利用者の誤認を招く訴求は、法的リスクだけでなく、企業の信用そのものを大きく損なう要因となります。
一方で、今回の事件を受けて、業界の健全化が進む可能性もあります。
法的権限を明確にした上で業務範囲を限定する事業者や、弁護士と正式な形で連携するモデルが評価されやすくなることが予想されます。
結果として、利用者にとってもサービスの質と安全性を判断しやすい環境が整う可能性があります。
このように、退職代行モームリ社長逮捕は、業界全体にとって大きな転換点です。
短期的には混乱が生じる一方で、中長期的には合法性と透明性を重視した再編が進むことが期待されます。
次章では、こうした状況を踏まえ、今後退職代行を利用する際に利用者が注意すべき具体的なポイントを整理していきます。
今後退職代行を利用する際に注意すべきポイント

退職代行サービスは、精神的な負担を軽減する手段として一定の需要があります。
しかし、今回の事件を踏まえると、利便性だけで選ぶことの危険性が明確になりました。
今後サービスを利用する際には、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
まず確認すべきなのは、サービス提供者の立場です。
弁護士が直接運営しているか、または弁護士が正式に関与しているサービスであれば、法的な交渉や判断を行う権限があります。
一方、民間企業が運営する退職代行は、あくまで退職意思の伝達に限定される点を理解することが重要です。
次に、業務内容の説明が具体的であるかを確認します。
退職交渉が可能であるかのような表現や、成功を保証する文言が使われている場合は注意が必要です。
合法的なサービスほど、できることとできないことを明確に区別して説明しています。
料金体系も重要な判断材料です。紹介料や追加費用が発生する仕組みが不透明な場合、後からトラブルに発展する可能性があります。
支払い方法や返金条件についても、事前に文書で確認しておくことが望まれます。
さらに、運営会社の情報公開姿勢も見逃せません。
法人情報、所在地、代表者名が明確に記載されているか、問い合わせ窓口が機能しているかは、信頼性を判断する上で基本的な要素です。
口コミや評判だけに依存せず、公式情報を丁寧に確認する姿勢が求められます。
退職に伴って未払い賃金や残業代、損害賠償などの問題が絡む場合は、退職代行ではなく、弁護士に直接相談する方が安全です。
費用は高くなる傾向がありますが、法的な保護と確実性を重視するなら、結果的にリスクを抑えられます。
この章で整理したポイントを踏まえれば、退職代行という選択肢を冷静に判断できるようになります。
最後に次章では、退職代行モームリ社長逮捕という出来事から見えてくる本質的な課題と、社会に投げかけられた問いについてまとめます。
退職代行モームリ社長逮捕から見える本質的な問題
退職代行モームリ社長逮捕という出来事は、単なる一企業の不祥事ではありません。
この事件が社会に突きつけたのは、便利さの裏側にある合法性と責任の問題です。
退職代行サービスは、働く人の心理的負担を軽減する役割を果たしてきました。
一方で、その成長スピードに法制度や利用者の理解が追いついていなかった側面も否定できません。
できることとできないことの境界が曖昧なまま拡大した結果、違法性が指摘される構造が温存されていました。
今回の事件で明確になったのは、サービスの名称や説明だけでは安全性を判断できないという事実です。
労働組合や弁護士との連携をうたっていても、その実態が伴っていなければ、利用者は法的リスクに巻き込まれる可能性があります。
これは事業者側の問題であると同時に、利用者側にも情報を見極める力が求められる時代になったことを意味します。
また、企業側の視点では、法令順守を後回しにした成長戦略の危うさが浮き彫りになりました。
短期的な利益や集客を優先し、法的な検証を軽視すれば、事業の継続性そのものが失われます。
今回の事件は、スタートアップや新興サービス全般に対する警鐘ともいえます。
社会全体としても、退職という行為を外部に委ねることの是非を改めて考える必要があります。
本来、退職は労働者の権利として認められた行為です。制度や相談先が正しく機能していれば、違法なスキームに依存する必要はありません。
退職代行モームリ社長逮捕は、業界の転換点であると同時に、働き方と法の関係を見直す契機です。
今後は、合法性と透明性を備えたサービスのみが信頼を得て生き残る時代に入ります。
利用者も事業者も、この事件を一過性のニュースとして終わらせず、教訓として受け止めることが求められています。
