
「聖闘士星矢」「リングにかけろ」で知られる漫画家の車田正美さん(72)が2026年9月2日、東京都内で記者会見を開き、自身が代表を務める著作権管理会社などが元スタッフに約46億円を横領されたと公表しました。同日、東京地裁に損害賠償を求める訴えを起こしています。
まず整理します。これは車田さん側が提起した民事訴訟であり、訴状に記載された内容は現時点で原告側の主張です。被告側の反論や裁判所の判断は、これから示される段階にあります。
この記事では、2026年9月2日時点で報じられている事実関係と、会見で明らかにされた手口、そして同種の被害がなぜ長期間発覚しにくいのかを整理します。
報じられた事実の整理
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提訴日・裁判所 | 2026年9月2日、東京地方裁判所 |
| 原告 | 車田正美さんが代表を務める「車田プロダクション」など3社 |
| 被告 | 3社の取締役だった元マネジャーの男性ら |
| 横領されたとされる額 | 約46億8,000万円 |
| 期間 | 2018年〜2024年 |
| 弁済済みの額 | 約18億円 |
| 請求額 | 約28億8,600万円 |
| 発覚の端緒 | 2024年2月ごろ、東京国税局からの指摘 |
報道は時事通信、東京新聞(共同通信)、日本経済新聞など各社が同日に伝えています。
報じられている手口
時事通信の報道によると、被告とされる元マネジャーは3社の取締役として、経理や対外交渉など事務作業全般を統括する立場にありました。訴えられている行為は次のとおりです。
- 車田さんの会社名義の預金口座から、自身が支配する複数の別会社に無断で送金した
- 取引先からのライセンス料を、自身が支配する会社に振り込ませた
著作権管理会社は、作品の二次利用やグッズ化、海外展開などのライセンス収入を扱います。「聖闘士星矢」は国内だけでなく海外での評価も高く、資金の流れが複雑になりやすい構造です。
発覚は税務当局の指摘から
報道によれば、問題が明らかになったのは2024年2月ごろ、東京国税局からの指摘がきっかけでした。社内の点検や取引先からの連絡ではなく、外部機関の調査で判明した形です。
2018年から2024年という期間は6年以上に及びます。この間、内部から異常が指摘されなかったことになります。
会見で語られたこと

車田さんは会見で、公の場に出ること自体がまれだと語りました。
ジャンプだとか、そういう読者とのイベントなんかはありますけど、こういった会見席っていうのは初めてです
被害についての受け止めとして、次のようにも述べています。
アニメや漫画の世界で悪い人間は見たことがない。本当に信じられなかった
代理人弁護士が説明した「遮断」の構図
ABEMA TIMESなどによると、代理人弁護士は、元スタッフが車田さんと関係者の接触を長期間にわたって遠ざけていたと説明しました。周囲に対して「聖闘士星矢の作者の車田正美という人間は人間嫌いだ」といった趣旨の説明をしていたとされます。
手口の構造については、弁護士が次のように述べたと報じられています。
窓口を自分のところに一本に絞って、かつ、その経理関係を全部自分しか把握できないようにして
金銭の流れと人間関係の両方を一人が握る状態が、長期化の背景にあったという主張です。
民事の賠償請求と刑事責任は別
今回起こされたのは民事訴訟です。刑事の手続きとは制度が異なります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 民事(今回の提訴) | 被害の回復を求める損害賠償請求。当事者が裁判所に訴える |
| 刑事 | 業務上横領罪など。捜査機関が捜査し、検察官が起訴を判断する |
一般論として、業務上横領罪は刑法第253条に定められ、法定刑は10年以下の拘禁刑です。公訴時効は7年とされています。ただし今回、刑事告訴が行われたかどうかは、2026年9月2日時点の報道では確認できません。
同じ被害はなぜ長期間続くのか
今回の件で示された構造は、規模を問わず起こり得るものです。特に、創作や技術に専念したい個人事業主・小規模法人では、経理を一人に任せる体制になりやすい傾向があります。
一般に、次のような状態はリスクが高いとされます。
- 経理担当者が一人で、通帳・印鑑・ネットバンキングの権限をすべて持っている
- 取引先とのやり取りの窓口が一人に集中している
- 代表者が残高や入出金明細を自分で確認していない
- 税理士や会計士など外部の目が入っていない、または担当者経由でしか接点がない
対策として挙げられるのは、権限の分離と外部の目です。送金の承認者と実行者を分ける、代表者が月次で残高と主要な入出金を直接確認する、取引先からの入金口座を代表者が把握しておく、といった運用が該当します。
報じられている内容が事実であれば、今回は「窓口の独占」と「経理の独占」が重なっていたことになります。どちらか一方でも分離されていれば、発覚が早まった可能性はあります。
現時点で確認できていないこと
- 被告側の主張・反論の内容
- 刑事告訴が行われたかどうか
- 被告とされる人物の人数や氏名(報道では公表されていない)
- 回収されていない約28億8,600万円の回収可能性
- 今後の裁判の日程
訴状の記載は原告側の主張であり、裁判所が事実と認定したものではありません。続報を読む際も、この区別を保つ必要があります。
車田正美さんについて
車田正美さんは1970年代後半に「リングにかけろ」で人気を得た漫画家です。1980年代に「週刊少年ジャンプ」で連載した「聖闘士星矢」は大ヒットし、アニメ化され、海外でも高い評価を受けました。現在72歳です。
よくある質問

車田正美さんが横領したのですか?
違います。車田さんは被害を訴えている側です。自身が代表を務める会社が元スタッフに横領されたとして、損害賠償を求める訴えを起こしました。
横領された金額はいくらですか?
訴状などによると2018年から2024年までに約46億8,000万円とされ、うち約18億円は弁済されているため、請求額は約28億8,600万円です。
どうやって発覚したのですか?
報道によると、2024年2月ごろの東京国税局からの指摘がきっかけとされています。
刑事事件にはならないのですか?
2026年9月2日時点で、刑事告訴の有無や捜査状況は確認できていません。今回起こされたのは民事の損害賠償請求訴訟です。
誰が訴えられているのですか?
車田さんの会社3社の取締役だった元マネジャーの男性らと報じられています。氏名は公表されていません。
まとめ|訴状の内容は「原告の主張」の段階
- 2026年9月2日、車田正美さん側が東京地裁に提訴し、同日に記者会見を開いた
- 2018年〜2024年に約46億8,000万円が横領されたと主張している
- 約18億円は弁済済みで、請求額は約28億8,600万円
- 被告とされるのは3社の取締役だった元マネジャーの男性ら
- 会社名義の口座から自身が支配する会社へ無断送金し、ライセンス料も振り込ませたとされる
- 発覚の端緒は2024年2月ごろの東京国税局の指摘
- 代理人は、元スタッフが関係者と車田さんの接触を遮断していたと説明
- 被告側の反論や裁判所の判断は、今後示される
権限が一人に集中し、外部の目が入らない状態は、金額の大小にかかわらず同じリスクを生みます。お金の流れと人のつながり、その両方を一人に預けない。今回の報道から読み取れる実務的な教訓は、この一点に集約されます。
※本記事は2026年9月2日時点で報道されている情報を基に作成しています。記載した内容のうち横領に関する事実関係は、訴訟における原告側の主張であり、裁判所が認定した事実ではありません。関係者には推定無罪の原則が適用されます。今後の審理により状況は変わる可能性があります。