
ロシア極東のハバロフスクに、菊花紋章が刻まれた標石をソ連兵が破壊する場面を表した対日戦勝記念碑が設置され、日本政府が撤去を求めています。
記念碑の除幕式は2026年9月4日に行われました。日本政府は「菊花紋章は日本を象徴する紋章として広く認識されている」として抗議しましたが、ロシア大統領府は9月8日、日本側の要求には応じない姿勢を表明。9月10日時点で撤去は決まっていません。
この記事では、最新の外交上の動きと、そもそも菊花紋章とは何か、皇室の紋章とパスポートのマークは同じなのか、一般人の使用は禁止されているのかを公的資料に基づいて整理します。
菊花紋章をめぐるニュースの要点
- 2026年9月4日、ロシア・ハバロフスクで対日戦勝記念碑の除幕式が行われた
- ソ連兵が、菊花紋章を刻んだ国境標石を銃で破壊する様子が表現されている
- 高市早苗首相は「全く受け入れられない」と表明した
- 茂木敏充外相は、外交ルートを通じて設置中止と撤去を強く要請した
- ロシア側は「日本の軍国主義とそれに対する勝利を忘れていない」と反論した
- ロシア大統領府は9月8日、日本の撤去要求を考慮しない姿勢を示した
- 9月10日時点で、双方の主張は平行線のまま
ロシアの対日戦勝記念碑で何が起きた?

日本外務省によると、9月4日、ハバロフスク市内で第二次世界大戦の対日戦勝を記念する銅像の除幕式が開催されました。
銅像はソ連兵を表し、その足元では、日本との国境を示す標石を模した石が壊される様子が表現されています。標石には菊花紋章がかたどられており、兵士が銃を使って破壊する構図です。
単に菊の花を描いたものではなく、日本を象徴する紋章を打ち壊す政治的な表現と受け取れることから、日本政府が反発しました。
日本政府は撤去を強く要請
高市早苗首相は9月5日、菊花紋章の破壊を表現する記念碑について「全く受け入れられない」とSNSで表明しました。
同日、茂木敏充外相も公式メッセージを発表。記念碑は日ロ関係にとって建設的ではなく、日本の国民感情の観点から「受け入れられず、極めて遺憾」としたうえで、外交ルートを通じてロシア側に設置の中止と撤去を強く要請したと説明しました。
外務省は、ロシア側が要請に応じていないことも遺憾だとして、撤去を引き続き働きかける方針です。
政府対応を発信した首相の経歴や政策については、関連記事の高市早苗氏の経歴・政策まとめで解説しています。
ロシア側はなぜ撤去を拒否した?
ロイター通信によると、ロシア大統領府のペスコフ報道官は9月8日、日本の撤去要求を考慮することは難しいとの立場を示しました。
ペスコフ氏は、ロシアは日本の軍国主義と、それに対するソ連の勝利を忘れていないと主張しています。ロシア側はこの記念碑を、1945年の対日戦勝を記憶するための施設と位置づけており、菊花紋章を当時の日本を示す歴史的な記号として扱っています。
つまり、両国は紋章の意味を異なる文脈で捉えています。日本側は現在も皇室や日本を象徴する重要な紋章とみなし、ロシア側は第二次世界大戦期の日本を表すものとして記念碑に使用した、という対立です。
最新の経緯を時系列で整理
| 日付 | 動き |
|---|---|
| 2026年9月4日 | ハバロフスクで対日戦勝記念碑の除幕式 |
| 9月5日 | 高市首相が「全く受け入れられない」と表明 |
| 9月5日 | 茂木外相が公式メッセージを発表し、設置中止と撤去を要請 |
| 9月6日 | ロシア外務省側が日本の要求を批判 |
| 9月8日 | ロシア大統領府が撤去要求を考慮しない姿勢を表明 |
| 9月10日現在 | 撤去の合意や具体的な変更は確認されていない |
現時点で確認できるのは、外交ルートでの撤去要請とロシア側の拒否です。日本が新たな制裁や対抗措置を決定したという公式発表は確認されていません。
菊花紋章とは?

菊花紋章は、菊の花を図案化した紋章の総称です。なかでも皇室を象徴する紋章として知られるのが、十六葉八重表菊(じゅうろくようやえおもてぎく)です。「菊の御紋」とも呼ばれます。
正面の16枚の花びらに加え、その間から後ろ側の16枚が見える八重の意匠になっています。一般的な菊模様のすべてが皇室の御紋章というわけではなく、花びらの数や重なり方によって異なる紋章があります。
由来は後鳥羽上皇とされる
国立国会図書館のレファレンス協同データベースによると、皇室が菊花紋を使い始めた由来は鎌倉時代初期までさかのぼります。菊を好んだ後鳥羽上皇が衣服、調度品、車、刀剣などに菊の文様を用い、その後の天皇に受け継がれて皇室の紋章として定着したとされています。
1926年の皇室儀制令では、内廷皇族の紋を十六葉八重表菊形、各宮家の紋を十四葉一重裏菊形と定めました。同令は戦後に廃止されましたが、十六葉八重表菊は現在も皇室を代表する紋章として用いられています。
菊花紋章は日本の正式な国章?
菊花紋章を、日本の法律で正式に定められた国章と説明するのは正確ではありません。
外務省は、パスポートに関する公式Q&Aで「我が国の場合、法制上、正式に決められた国章はありません」と説明しています。一方、菊花紋章は皇室の象徴であると同時に、日本を示す紋章として在外公館や旅券などでも長く使われてきました。
今回の外務大臣メッセージも「国章」とは表現せず、「日本を象徴する紋章として広く認識されている」としています。したがって、法定の国章ではないが、日本を代表する象徴の一つとして公的に扱われていると理解するのが適切です。
パスポートの菊と皇室の御紋は同じ?
似ていますが、同一の意匠ではありません。
| 使われる場所 | 主な意匠 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 皇室 | 16弁の八重菊 | 皇室を代表する紋章 |
| 日本のパスポート | 16弁の一重菊 | 国章の代わりとなる旅券の紋章 |
| 一般の菊紋 | 花びらの数や重なりが多様 | 家紋、社寺の紋、装飾など |
外務省によると、パスポート表紙の菊には、皇室の御紋章にある後ろ側の複弁がありません。国章を表紙に入れる国際慣行に対応するため、国を代表する花の一つである菊を図案化して、旅券の紋章にしています。
菊花紋章は一般人が使うと違法?
菊の図柄を使うことが、現在の法律ですべて一律に禁止されているわけではありません。ただし、商標法には重要な制限があります。
特許庁は、国旗、菊花紋章、勲章、外国の国旗と同一または類似する商標は登録を受けられないと案内しています。これは商標法第4条第1項第1号に基づくものです。
また、皇室や国の機関と関係があるように誤認させる表示、パスポートと紛らわしい製品などは別の問題につながる可能性があります。商品やロゴに似た図柄を使う場合は、「菊なら自由」「花びらの数を変えれば必ず問題ない」と自己判断しないことが大切です。
今回の問題で誤解しやすい点
「日本の国旗を壊す像」ではない
壊される表現になっているのは日の丸ではなく、菊花紋章が刻まれた国境標石です。日本政府は、菊花紋章が日本を象徴するため受け入れられないとしています。
ロシアが撤去に同意したわけではない
日本は撤去を強く要請していますが、ロシア大統領府は応じない姿勢です。2026年9月10日時点で、撤去が決定したとの公式発表はありません。
すべての菊模様が同じ紋章ではない
皇室の八重菊、パスポートの一重菊、社寺や家紋に使われる菊紋は区別が必要です。ニュースの「菊花紋章」は、単なる花柄ではなく、日本の象徴性を持つ紋章として扱われています。
今後の焦点
最大の焦点は、ロシア側が記念碑をそのまま維持するのか、意匠の一部を変更するのかです。ただし、ロシア大統領府が撤去要求を受け入れない方針を明確にしているため、短期的な撤去は難しい状況です。
日本政府が今後も外交ルートで働きかけを続けるのか、首脳・外相レベルで改めて取り上げるのかも注目されます。現段階では、撤去要請を超える具体的な措置は発表されていません。
よくある質問

なぜ菊花紋章がニュースになっているのですか?
ロシアのハバロフスクに、菊花紋章を刻んだ標石をソ連兵が破壊する対日戦勝記念碑が設置されたためです。日本政府は撤去を要請しました。
記念碑は撤去されますか?
9月10日時点では撤去される見通しは立っていません。ロシア大統領府は、日本の要求を考慮しない姿勢を示しています。
菊花紋章は天皇家の家紋ですか?
十六葉八重表菊は皇室を象徴する紋章です。一般に「菊の御紋」と呼ばれます。
菊花紋章は日本の国章ですか?
日本には法制上正式に定められた国章がありません。菊花紋章は法定の国章ではありませんが、日本を象徴する紋章として広く認識され、公的な場でも使われています。
パスポートの菊は皇室の御紋と同じですか?
異なります。皇室の御紋は16弁の八重菊、パスポートは16弁の一重菊です。
まとめ
- 9月4日、ハバロフスクで菊花紋章の破壊を表現した対日戦勝記念碑が除幕された
- 日本政府は国民感情の観点から受け入れられないとして撤去を要請
- ロシア大統領府は9月8日、撤去要求に応じない姿勢を示した
- 9月10日時点で撤去は決まっていない
- 十六葉八重表菊は皇室を象徴する紋章
- 日本には法制上正式に定められた国章はない
- パスポートの菊は皇室の八重菊とは異なる一重菊
- 菊花紋章と同一・類似する商標は登録できない
※本記事は2026年9月10日時点で確認できた政府発表と報道に基づきます。外交上の対応や記念碑の状況は変わる可能性があります。